しんの超私説アルベルト考察
・機械仕掛けのキス
※まだ本編「機械仕掛けの心臓編」未読の方はネタバレ＆先入観もつ危険性があると思うので御注意
下さい。
「機械仕掛けの心臓編」でのアルベルトの香嶋奈々ちゃんへのキス。
――初めて読んだのは高校生の時だっただろうか。とにかく甘やかすでなく、説教するだけでなく
こういう受け止め方が出来るなんて懐深い人だな、と思い、そして「人の痛みへの触れ方が判るやさ
しい人なのだな」と思った。００４というキャラクターに「お。」と注目し、その内一線を画すに至
った(笑) 大きな一因である事は間違いないと思う。
で、なんで↑みたく思ったんかいな、と今回ちょいと突っ込んで考察してみる事にした。ワタシが考えるに、あのキスは頬や額ではイミがない。
どうしても唇に、でなければならなかったと思う。「フロイラインたち」にも書いたが、だからこそ
奈々ちゃんは救われたのだと思っている。「親がかまってくれないから」と拗ねてふてくされ、関心を惹きたい一心でグレてワルぶってる彼
女は説教され、なにさ大人なんてどうせ、と怒りに任せて実に大胆で捨て身な方法で彼を挑発する―
―というか「試した」。
それに対し彼は狼狽えずに真っ向から真摯に対峙し、彼女が落ち着いた後きちんと話し合う。翌日
までいるという約束を交わし、翌朝はコーヒーとトーストというシンプルながら手ずから朝食を作っ
て一緒に食べる等の疑似家族的愛情を示してやる。（「お化粧なんかしない方がずっとかわいいよ」
なんぞとしれっと言ったりするトコは何であるのだが‥‥(笑) (そゆ事言うからこのヒトは〜；)）
ここのところのやりとりの際の奈々ちゃんは実に素直でカワイイ。（「ウン」を「はい」に言い直し
たりして）
いつまでもここにいるわけにはいかない、と去ろうとする彼に対し、彼女は堰を切ったように「―
―行っちゃいや……！！」と実にストレートにぶつかり、「愛してくれ」と懇願する。いい子になる
から、と。寂しいのだと。誰もかまってくれないし、愛してくれないのだ、と縋る。
それに対し、それは愛ではなく、甘えなのだ、「違う」と彼はきっぱりと否定する。
――そうした「甘え」に対して拒絶はしたものの、彼は彼女をああした形で受けとめる。
前夜の挑発という形の女としてのアプローチも拒否され、更にまた否定されては立場がない。子供
とはいえどちらも文字通り体当たりでぶつかったのだから傷つく。それに対し、嫌いだからではなく、
男としてではなく、「人として」大事に思ったからこそ応える事ができなかったのだよ、ごめんねと
いう答えを返したのがあのキスなのだと私は解釈したのだと思う。
言葉による安易な慰めよりただ抱きしめる等の行為が何より雄弁に想いを伝える術(すべ)になり得
る事もある。つまりは一見矛盾しているようではあるが、奈々ちゃんを女性として認めるとかなんと
か以上に一個の「人間」として尊重して認めたが故の証としての行為としてのキスであり、そういう
もろもろの複雑な意味や重さを込めるからこそ唇に、でなけければならなかったのだ、と思う。
（ああもう感性的なものを説明するって難しいったら‥‥； ワケ判るんだろうかこれで(涙)）
「癒される」とは「存在を認めてもらえる」ことなんだそうだ。
むろん「いいかい、世の中には‥‥」＋腕見せもあった上だが、あのキスで「認められた」からこそ
彼女は自分で思い込んでいる、存在を否定された「愛されない、要らない子供」から脱却できたのだ
と思っている。
だから「小学(六年)生）にキス＝ロリコン」になんでなるんかいな、そーいうイミのキスと違うと
思うんだけどなァというのがワタシの持論である。
映画「レオン」のマチルダに見られるように小学６年生―12、3才という年齢は親的愛情を求めて
慕う子供（少女）から大人（女）に変わりゆく狭間の絶妙な年齢であると思っている。（岩井俊二監
督作映画「打ち上げ花火―下から見るか？横から見るか？」のなずなもそんな感じだろうか）
そういう微妙なバランスの上の話だからいいのであって、高校生だとかえって逆に生々しくなるよ
うな気がするのでだからイヤなのかも‥‥＞「もう一つの改変」しかしそれこそ通りすがりに出会っただけの、“やっかいな事に関わっちまったぜ(溜息)”と思っ
たであろう少女に、律義というのか誠実というのか‥‥
（いちいちちゃんと「容(い)れてあげちゃう」んですよね＞このヒトは。
ヘレンといいメイムちゃんといい、「仲間の危機」がかかると実に冷徹な役回りをしますが本質
的には女子供に優しいヒトなのだと思います。）
下手をするとありがちな不良少女更生の説教話になるギリギリの線のハナシだなと思う。
あの機械剥き出しの両腕から彼女は何処までの事を読み取ったのかは定かではないのだが、ともあ
れ彼女にとっては忘れ得ぬ人となり、彼に恥じないようにと強く生きていってくれるだろうと思う。
（初恋になったんだろうなァ‥‥）
――ひいき目ヌキにしてこの話、００ナンバー中彼でしか成り立たなかっただろうなと思っている。
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